バンドマンたちがタトゥーに込めた意味



一度身体に彫ると、自然に消えることはないタトゥー。中途半端な思いではなく、それぞれ大切な思いを込めて身体に刻んだはず。

誰よりも思いを曲に乗せて発信し続けるバンドマンたちが身体に刻んだタトゥーには、いったいどんな意味が隠されているのでしょうか。日本のバンドシーンを牽引するあのバンドマンたちのタトゥーの秘密に迫りました。

Taka(ONE OK ROCK)

世界を股にかけ、今や日本を代表するロックバンドとなったONE OK ROCK。そのボーカルを務めるのはTakaさんです。両親は演歌歌手の森進一と森昌子。

弟のHiroさんもMY FIRST STORYというバンドでボーカルを務めているという歌手一家なんです。Takaさんは、ジャニーズ事務所から「NEWS」の一員としてデビューしますが、すぐに脱退。

その後、ONE OK ROCKを結成し、メジャーデビューを果たします。ハイレベルの歌唱力、音源と変わらぬ力強いボーカル、シャウトと伸びる歌声を自在に操る日本屈指のボーカリストなんです。

2007年にメジャーデビューした彼らは、2015年から本格的に海外進出を始めます。ONE OK ROCKのメンバーが幼い頃から慣れ親しんできたラウドロックのサウンドに、キャッチーなメロディ。そして若い世代の心に響く歌詞が世界中で共感を生んでいます。

そんなTakaさんも、自身の身体に数々のタトゥーを刻んでいます。

まず左腕上部には、「ピラミッドアイ」のタトゥーが刻まれています。このタトゥーには「万物を見通す目」という意味が込められています。その周りを囲むように、縫い合わせたように傷跡のある心臓や、脳みそ。心臓の周りには十字架がたくさん刻まれていて、彼の幼少期からの様々な心の傷を乗り越えていこうとする気持ちを表しているのがわかります。

更にその下には、両手の手のひらに「LOVE」と「HATE」の文字。これは両手に愛と憎しみを抱えているというのを意味しています。

また印象的なタトゥーとしては、左肘の内側に「XX△XV」というタトゥーがあります。

これは2015年に発売された7ndアルバム「35xxxv」と一致するレタリングタトゥー。2015年は、ONE OK ROCKが海外進出を果たした年となっており、心機一転のつもりで身体に刻んだのかもしれません。

またTakaさんのトレードマークにもなっている左手首のコウモリのタトゥーには、「目に見えないところで冒険をする直感力のある歌うたいになりたい」という思いを込めて彫ったそうです。

まや右肘の近くには、矢印の形のレタリングタトゥーが入っています。

和訳すると「自分の思考を見つめろ。それはいつか言葉になる。自分の言葉を見つめろ。それはいつか行動になる。自分の行動を見つめろ。それはいつか習慣になる。自分の習慣を見つめろ。それはいつか性格になる。自分の性格を見つめろ。それはいつか運命になる。」という格言。

Takaさんのタトゥーには、一貫して「見えにくいものを感じ、しっかりと見つめる」というテーマがあるんですね。

MAH(SiM)

日本のラウドロックシーンを牽引するレゲエパンク・バンドのSiM。ヘヴィサウンドとリズミカルなレゲエのリズム、キャッチーなメロディで若者を中心に人気を集めています。2004年に湘南で結成されたSiMは、数回のメンバーチェンジを行い、今にいたります。名前の由来は「Silence is mine.(静寂を我が物に)」の頭文字を意味しています。

ボーカルを務めるMAHさんは、奇抜な髪型に悪魔のようなアイメイク、ポロシャツにネクタイというおなじみのスタイルで、身体中にはびっしりとタトゥーが刻み込まれています。彼のタトゥーの特徴は、海外のエモやメタルバンドのメンバーに見られるような、両腕にびっしり彫られたスタイルです。

MAHさんのトレードマークともなっているコウモリのタトゥー。首に彫られたこのタトゥーは、彼が人生で初めて身体に刻んだファーストタトゥーとなっています。

彼は「タトゥーという一生身体に刻むものを背負う覚悟として、どうやっても隠せない首に大好きなコウモリをファーストタトゥーとして入れた」と語っています。コウモリは一般的には「破壊」や「嫉妬」を象徴していますが、中国では「幸福」「長寿」のシンボルとして知られています。

左腕には、「サキュバスと戦争をモチーフにしたものをコラージュスタイルに」というざっくりとしたオーダーのもと完成した作品。サキュバスは古代ローマ神話に出てくる悪魔の一つ。

SiMの楽曲にも「SUCCUBUS」という曲があります。「戦争」をモチーフにしたタトゥーには、戦闘機や兵士、ガスマスクなどが描かれています。タトゥーの絵のタッチとして、MAHさんが大好きな世界的なグラフティアーティストのBanksyのデザインを彷彿とさせるタッチで、彼の好みがわかるタトゥーとなっています。

右腕には、マリア様のタトゥーが刻まれています。これは芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を西洋風にアレンジしたデザインと本人が公言しています。肘に放射線状に入ったデザインは、パンクスの象徴である蜘蛛の巣のタトゥーを銃痕のようにアレンジしたもの。

さいごに

今回は、若者の人気のONE OK ROCKとSiMからそれぞれのボーカルたちのタトゥーに込められた思いを探ってみました! 一般的にタトゥーに対して「怖い」など批判の的となることが多いですが、生半可な気持ちで身体にタトゥーを刻む人はいません。デザインであったり、人間1人ひとりの生き様がタトゥーとなり、自身を表現するツールとなっているのです。自分の人生を背負って、自分の考えを発信するツールとしてタトゥーを見直すきっかけになれば幸いです。