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– 2018-08-09 最新情報を元に加筆修正
とあるInstagramの投稿、その美しさに注目!2017年3月、幻想的に青く輝く、夜の海の光景がInstagramに投稿されました。
Sarah Kubankさん(@sarah_the_explorer_76)によるこの画像には、さまざまな海外のメディアから画像使用のオファーが舞いこみ、世界中に配信され、その美しさで話題になりました。
場所は自然豊かなタスマニアの海。sarah_explorer_76さんの他にも、この不思議な景色をカメラに収めたInstagramアカウントが存在します。
実はこれ、いつでも見られる景色ではありません。とある条件が重なることで、初めてこんな光の海が現れるのです。
Kubankさんが捉えた、夕暮れ時の岩場の波打ち際の画像。他の場所とは違って、一箇所が青白く発光していることがわかる画像です。
魚の群れ?それとも何かの人造物が写っているのか・・・?かなり気になりますよね。
タスマニアは、オーストラリアの州であり、本島から南へ約240kmに位置する北海道より少し小さい位の面積の島。日本同様に四季がありますが、夏も涼しくて過ごしやすい気候です。オーストラリア同様に独特な自然生態系があり、「タスマニアデビル」などここにしか生息しない動物も存在します。
世界自然遺産に指定されている原生林や、美しい海には多様な海洋生物など、手付かずの自然が魅力。ダイビングやカヤック、自然散策、動物とのふれあい、歴史ある町並みが人気の観光地です。そんなタスマニアの海、この光の正体は「渦鞭毛藻(うずべんもうそう)」という種類の夜光虫、いわゆるプランクトンです。
普段から海に生息しているのですが、海水の温度が一時的に高くなった場合などに大量発生することがあります。この大量発生が夜に起こった場合、このように海面が青く輝いて見えるのです。なお、昼間に発生する場合は赤く見え、大量発生ではいわゆる「赤潮」の状態となります。
この夜光虫の発光はタスマニアの海ではよくあることなのですが、今回ほどの大規模な大量発生はめずらしいそうです。しかも繁殖した夜光虫が生きている間だけの現象ですから、それほど長くは続かず、見られるチャンスは稀なんです。
また、今回のような驚異的な数の夜光虫の大量発生は、海水温度の上昇およびリンや窒素、廃水などで海が汚染されていることが原因だという説もありますが、まだまだ調査の余地がありますね。
いずれにせよ、めずらしいこの光の海をはじめ、表情豊かなタスマニアの神秘的自然風景をInstagramでたずねていきましょう。
こちらはタスマニアに住むInstagramユーザー、Leanne Marshall Tasmaniaさん(@leannemarshall)による投稿です。
タスマニアのロックケープ国立公園から見下ろした、午後の海の風景。透明度の高い澄んだ海辺の水の底に、何かピンクや茶色がかったものが見えますね。
これが夜光虫です。もし昼間にこんな状態を見つけたら、ぜひ暗くなってからもう一度見に行くのがオススメだそうですよ。Marshallさんのアドバイスコメントどおりに、再び夜に来てみると・・・
さてお待ちかね。昼間とは全く違う、夜光虫が青く輝く幻想的な表情の夜の海に大変身しました!こうやってほぼ同じ場所を昼と夜で見比べてみると、いっそう光のマジックが特別なものだとわかりますね。
なお、Marshallさんは海だけにとどまらず、豊富なタスマニアの自然を撮った画像を多く投稿しています。@leannemarshallは、タスマニアの魅力をInstagramを通して志ってもらおうというアカウントです。
角度を変えて、桟橋の上から撮った画像。眼下の波がきらきら輝いて、なんとも不思議な景色です
ここから海に飛び込んだらどうなるんだろう、なんて思いませんか?実はこの夜光虫、岩で波が砕けたり、船が通過したり、石などを投げ込むなどの外的刺激を受けると発光するんです。
ということは、波が起きやすいこんな桟橋のある岩場は、絶好のロケーションというわけですね。
打って変わって、雄大な景色の中、静かな海でカヤックを楽しむ画像。・・・と思いきや、どこかが不思議?そう、水の色が赤いんですね。こちらはタスマニア南西部にあるサウスウエストパーク国立公園内にあるバサースト湾。
「赤い海」として世界的にも非常にめずらしいことで知られています。タスマニアには同じような赤い水のスポットがいくつかありますが、バサースト湾はその中でも特に有名な秘境。シーカヤックで数日かけて赤い海を満喫するツアーもあるんですよ。
赤い海の理由は意外と単純で、「湾に流れ込む川の水が赤い」ということ。川の流域に、紅茶などに含まれる成分「タンニン」を含むボタングラスという植物が生息し、酸素に反応して赤く発色したタンニンを含む川の水が湾に流れ込みます。
このとき川の淡水は海水よりも比重が軽いため、上の方は淡水、下の方は海水という2層構造になってより赤く見えるんです。なお入り口が狭く、外海との水の循環がゆるやかな湾であることも「赤い海」の条件。これを満たす環境と地形は世界中でも貴重なものなんです。
また、赤い水は光を通しにくいため、水深8mで普通の海の深海の暗さになります。そこは静かで、浅い海なのに深海魚が棲息する不思議な世界。外海の影響がないため、新種の生物が見つかったり、原始的なサンゴ、中には数億年前のままの姿の生物も棲んでいる、まさに幻の海ですね。
岩にペンキを塗ったの?いいえ、実はこれ、赤い苔なんです。
ここは「世界で2番目に素晴らしいビーチ」に選ばれたことのある、秘境のビーチ、ベイ・オブ・ファイヤーズ。かつて先住民族のアボリジニが火を焚いていたという言われから名づけられた北東の海岸線です。鮮烈なコントラストが異世界のような、手つかずの場所。
浅瀬の澄んだ海水と白い砂のビーチで、ついつい時間を忘れてしまいそうです。
なんとタスマニアでは、オーロラが見えるんです。北欧やアラスカなどの北極圏だけじゃないんですね。
オーストラリアやニュージーランドでも観測できるのですが、南半球では南極にどこよりも近い高緯度のタスマニアが一番見えやすいそうです。南側に妨げのない地形の場所なら、かなりの確率で遭遇できるのだとか。
一般的に知られる北極圏のカーテン状のものとは少し違い、色のグラデーションが特徴です。
これら南半球でのオーロラは「オーロラ・オーストラリス」と呼ばれ、Instagramでは#auroraaustralisというハッシュタグで検索すれば、さまざまな美しいオーロラ画像が楽しめますよ。
今にも降ってきそうな星のミルキーウェイとキレイな色のオーロラの空は、一度はこの目で見たいと思ってしまう美しさ。もしもこれに輝く海も同時に見られたら・・・もう天国ですね!ちなみに、オーロラは年中観察可能ですが、夜が長い冬の時期が一番見やすいそうです。
実は北半球の北極圏でもオーロラは年中現れているのですが、夏は白夜のため空が明るくて見えないんです。だからオーロラ観察は極寒のアラスカなどのイメージがあるんですね。その点南半球のオーロラは、寒さを気にせず観測できるといううれしいメリットがあります。
実際、日本からタスマニアなどへの「オーロラ観察ツアー」が旅行会社から数多く企画されています。北極圏より気分的にハードルが低く、観光やマリンスポーツ、アクティビティもたくさん楽しめそうです!
夜光虫が夜の海に青く輝き、他にはない赤い海には深海魚が棲んでいる。夜空には満天の星と鮮やかな色の織り成すオーロラが広がる。スケールもさまざまに、タスマニアの自然がわたしたちに見せてくれるマジックは、それは驚くものばかりです。
この地球上には、まだまだ知らないことがたくさんあるんだと思い知らされる一方、興味は尽きることを知りません。しかもオーストラリア本島よりも穴場、一度は訪れてみたくなります!
そして、いつまでもこの美しい環境が保たれることを心から願いたいですね。