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-2019-08-09-最新の情報を元に加筆修正
細いロープをたぐり寄せながらゴツゴツとした岩壁を果敢によじ登る赤い髪の女性。彼女の名前はIrene Yeeさん。ラスベガスに拠点を置いて活動するロッククライマー。
彼女のインスタグラムには5万人を超えるファンがいて、彼女のロッククライミングを見守り、彼女に勇気をもらっています。
彼女は「週末の赤い戦士」とよばれています。
その理由は、彼女が赤い髪であることと兼業ロッククライマーだから。彼女は世界的に有名なシルクドソレイユの裏方大工としてはたらく一方、週末にロッククライマーとして活動しています。
ロッククライミングはもともと山登りのプロセスの中で難易度が高い岩場を克服するために考えられた技術です。その技術が派生して、純粋に岩場をよじ登るプロセスだけを楽しむようになったのがロッククライミングの始まりです。
ロッククライミングはとても過酷。岸壁につくられた道はありません。自分で自分がよじ登る道を決め、岩壁にハケーンとよばれる足場や手をかける道具を打ち込んでいきます。
もちろんそこに安全は保証されていません。もしかしたらハケーンが岩壁から抜け落ちてしまうかもしれません。次にハケーンを打ち込むことができなければ、ルートの大きな変更を余儀なくされます。
自分自身を支えているのは、肉体と精神だけです。
なぜIrene Yeeさんは、そんな過酷なロッククライミングに挑戦し続けているのでしょうか?
「私のまわりはあまりいい顔はしなかったけれど、私の好奇心はとても旺盛だったの。それで、私は自信を持って飛び降りる覚悟を決めたのよ」
彼女は、自分の心と正面から向き合い、ありのままの気持ちで行動しようとロッククライミングを始めたようです。
いくら好奇心が旺盛で、自分の気持ちのままに行動しようと決心した彼女。でも、なぜロッククライミングだったのでしょうか?
「ラスベガスで通うジムで、クライミングの方法を教えてくれる人たちが集まる楽しいコミュニティに出会ったの」
彼女がはたらくシルクドソレイユのある街ラスベガス。彼女は裏方大工という体を使う仕事をした後にトレーニングを行います。それだけでもヘトヘトになってしまうと普通なら思ってしまいます。
こういう点を見ても、彼女の、折れない向上心を垣間見ることができます。
彼女が通うトレーニングジムを利用する人たちの中で、クライミングを楽しむコミュニティがあり、Irene Yeeさんの好奇心はくすぐられます。
すぐに彼女はそのコミュニティの一員となり、クライミングの方法や楽しさを学びます。
「ジムよりもロッククライミングの方が費用も安いし」と、好奇心だけでなく、コスト意識も高いしっかりもののIrene Yeeさん。そのコストが安いロッククライミングは、彼女にどれほどの影響を与えているのでしょうか?
彼女はロッククライミングが2つのことを教えてくれると言います。
ひとつは、自分の心は反抗的で勇敢ということ。
投稿を見ると、写真の絶壁はとても登れないように感じてしまいます。彼女は、このような困難に、勇気を持って望んでいるのでしょう。写真の表情からは、その覚悟が見て取れます。
もうひとつロッククライミングが教えてくれること。それは、ロッククライミングという限界と危険が隣り合わせのスポーツの中で、直面する困難を克服できるのは自分の体と心しかないということだとIrene Yeeさんは言います。
これは、ロッククライミングだけではなく、人生においても同じことが言えます。自分には不可能だと思えることに直面するのは、生涯続いていきます。
その困難な状況を乗り越えていくために、自分のカラダと精神力を鍛えることが大切だと彼女は教えてくれています。
人生の縮図のようなロッククライミングにおいて、Irene Yeeさんは、強いカラダと精神力を身に付け、喜びを感じているのでしょう。
Irene Yeeさんは、そんな喜びをインスタグラムの写真を通して世界中に発信し続けています。
インスタグラムで発信するIrene Yeeさんの写真が当てるスポットライトは、彼女自身という個人的なものでも、ロッククライミングという具体的なものでもありません。
ロッククライミングをする女性の存在なのです。それが他のクライミングインスタグラマーと決定的に違うところであり、多くの人がその生き方に共感しているのです。
それが、彼女のインスタグラムに5万人を超えるファンが存在する最大の理由です。
Irene Yeeさんがインスタグラムを通して伝えたいことは、自信と信頼です。
クライミングは自分と岩とが形成する社会。クライミングでは、岩を上り、ストップしてハケーンを岩に打ち込みます。体力を維持するために休息もとらなければいけません。登るだけではだめで、降りなくてはなりません。
それらをやり切らなければ、戻ってくることはできません。失敗は許されないのです。ロッククライミングは本当に苦しいのです。
でも、それをやり切ったときに自分自身に自信と信頼を得ることができるんです。ロッククライミングをやり続けていれば、どこかのタイミングでそれを知ることができるのです。
上のように、彼女は自分だけではない多くの女性ロッククライマーの写真も投稿しています。挑戦する女性に心から敬意をはらい、困難乗り越える姿を伝えていくことも彼女のインスタの魅力です。
自分や仲間が頑張ることができた場所をインスタグラムで報告する瞬間は、なんともいえない爽快な気持ちがあるのでしょう。投稿を見ると、爽快な気持ちが繰り返され、心と体に自信と信頼が満ちている表情が伺えます。
ロッククライミングでは、ロープに座って、次にどのように動けばいいのか考えたり、どれくらい休憩を取ればいいのかを判断したりします。そのような中で、自分がどんな人間であるかをロッククライミングで確認しているのかもしれません。
雑誌やメディアでは、ロッククライミングというスポーツにスポットが当たるので、そういった女性の人生観のようなものにはなかなかスポットは当たりません。だから「女性の人生観にスポットを当てて発信するのが私の仕事」だとIrene Yeeさんは言います。
彼女のお気に入りのショットは、壁と壁の間で恐怖を克服したクライマーの瞬間をとらえたものです。女性が自分自身への自信と信頼と勝ち取る瞬間の姿が、多くの女性に勇気を与えます。
多くのプロのカメラマンは、フォトジェニックな場所を探し、映り映えがよくなる太陽の光りに変わるのを待ちます。
Irene Yeeさんの撮影は違います。
自分が“持っている”ものをありのままに撮影し、それがあまり映り映えが良くなくても、それが今日の私が“持っている”ものと考え、クールなバッドショットを作ろうとしているのです。
彼女が発信する「ありのままの状況を受け入れて、写真を撮影する」というメッセージは、これまでの登山撮影をするカメラマンとは明らかに一線を画しています。彼女のメッセージは写真撮影ではなく、女性の生き方だからです。
最後に、彼女の言葉を紹介しましょう。
「ほとんどのクライマーはプロのクライマーではありません。私と同じように働くなかで、自分が好きなことをするために山で時間を過ごしています。あなたの中にある情熱という小さな火花を大切にして大好きなことに取り組めば、たくさんの興奮を味わうことができるはず。そして多くの人たちはその一部を味わいたいと思うものなんです。」
Irene Yeeさんは今日も、世界の全ての女性に勇気を与えるべく、ロッククライミングの写真を発信しています。