取り壊し前の学生寮を、最後のアートで彩る


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– 2018-10-09 最新情報を元に加筆修正
 
取り壊し前の学生寮を、最後のアートで彩る・・・・そんなプロジェクトを完遂させたアーティスト達がフランスのクリエイティブスタジオBitume Street Artです。

ストリートアートの第一人者である彼らは、大学側からの依頼で取り壊し前の一ヶ月感という限られた期間に学生寮の至るところにストリートアートを施し、建物の最後を美しく飾りました。

アートの完成後に建物そのものがなくなってしまうというカタルシスを抱えたこのプロジェクトは、関わった多くの人の思いを乗せて「見る・感じる・つくりあげる・失くなる」という感情が揺さぶられる壮大な記憶と記録を残しました。その作成にあたっての一部始終をご紹介いたします。

取り壊された学生寮について

今回ストリートアートで彩られた建物は、パリ国際大学都市という、フランスの高等教育機関で学ぶ主に留学生のためにパリ南端の14区に創られた学生寮群です。

パリ国際大学都市という名前から大学機関のように思えますが、実は学問を学ぶ各国に人に向けて宿泊を提供する施設です。非常に多くの学生や研究者達が集まり、聴講生、大学生、研究生、教師、演劇家、芸術家など全ての専門的に学ぶ人を含めると、約126ヶ国の人々がこちらで過ごしているそうです。日本人向けの日本館という建物もあるそうですよ。

学問そのものを学ぶ場所ではありませんが、学生寮という性質上、住んでいた街を離れ海外に渡航し孤軍奮闘する留学生達にとって、寮というホームに帰ることは、疲れた体を癒し、明日へのエネルギーをチャージする大切な場所だったことでしょう。

この彼らの思いが詰まった建物が、失くなってしまうのです。

パリ国際大学都市の学生寮について

パリ国際大学都市の学生寮は、日本・アフリカ・イタリア・スペインなど各国の合計37の寮があります。敷地の面積は34ヘクタールで、東京ドームが7個以上分であり、まさに学園都市の寮であることがわかります。

寮の周りも、緑豊かな自然あふれる敷地で、敷地内にはカフェテリア、郵便局、学生レストラン、図書館、プール、テニスコート、体育館、スポーツグランド、県庁の事務所、音楽施設、広大な芝生など総合的に学生生活をサポートする場所であることが伺えます。

自然豊かなのどかな雰囲気が漂うこの場所で、期間限定とはいえ、突如ストリートアートが展開されることは、誰も想像していなかったと共に多くの驚きを残したことと思われます。

Bitume Street Artによるストリートアートの数々

このプロジェクトの規模とストリートアートの凄さ・迫力は、言葉だけでは伝わらず、写真など目を通して感じないと伝わりません。実際にインスタグラムに投稿された写真から、描かれたストリートアートをご紹介いたします。

 

穏やかな気持ちになれるストリートアート

こちらは美しい女性の髪が流れるようにそよぐストリートアートの写真です。

鮮やかな色使いと、優しい雰囲気を持った女性が、見るものを癒すような力を秘めていますね。女性の穏やかな表情に、見ているこちらも温かい気持ちになります。

これが、絵画のように決められた大きさのキャンパスでなく、学生寮の廊下の壁という規格外の大きな壁に描かれているので、現実に見ると写真以上の迫力と感動がありそうですね。

絵画のようなクオリティのストリートアート

まるで上質の絵画のような、高精度なクオリティのストリートアートです。

扉からこちらを覗き見るような視線に胸を打たれてしまいそうですね。子供だと思われる幼い子の無垢な視線が、「建物が壊れてしまうこと」へのどうしようもない、あきらめと悟りを訴えているような一枚の絵です。

ストリートアートというと、原色を使用したポップな壁画や、モノクロでデコレーションした強調された文字で訴える作品が多いように思いますが、このような絵画としても成り立ちそうな作品もあるのですね。

さらに、それが描かれた場所・作成者の思いなどもつまり、社会的なメッセージも込めた作品であることも感じます。

 

雨降る町並みのストリートアート

こちらも、染料を雨のように用いた芸術的な作品です。

精巧に描かれた町並みはポップかつオシャレで、イラストとしても完成度が高いように思います。

しかし、雨として描かれた色が赤色という、血を連想させる色で、この後の不吉な時間を示唆しているようでもあります。

風刺がきいた一枚です。

ロックテイストのストリートアート

この投稿は、ロックな躍動感あふれるストリートアートの写真ですね。

ストリートアートの熱気や情熱、そして退廃的な雰囲気など、魅力が伝わる一枚です。ペイントの染料が垂れて壁を彩るところまで計算されつくした構成になっており、ストリートアートの奥深さを感じますね。

ストリートアートは素材を選ばない

この投稿は、寮のなかの壁だけに収まらず、天井・壁面・床の全てを含めて視覚的にストリートアートとして完成させた作品です。

天井裏の配管や、床面では色調を変えて表現するなど、アーティストのセンスやこだわりが抜群の作品ですね。これだけ巨大な作品をそこにある素材を活かして作り上げていく、アーティストの感性と技術に驚かされてしまいます。

描かれた面積は約12000平方メートル!

数多くのストリートアートで彩られた学生寮ですが、今回取り壊す予定の6階建て学生寮の隅々まで、約12000平方メートルの面積がストリートアートで彩られたそうです。

にわかに想像がつかないほど巨大な数字ですよね。

おおよそ一辺が100メートルの正方形を想像してください。その内部全てをペイントで彩る(約1万平方メートル)ことは、本当にビックスケールのエキスポであることが想像されます。

 

このストリートアートを完遂したアーティスト達

これらの学生寮に描かれたたくさんのストリートアートは、様々な個性的な作風があることからもわかるように、およそ100人のストリートアートスペシャリスト集団 (Bibume StreetArt)からから短期間のうちに描かれました。

残念ながらストリートアートを公開した期間は7月中に終了してしまったのですが、学生寮のストリートアートを見に、多くの観客がこの場所を訪れ建物とのお別れを惜しんだそうです。

ストリートアートの作成と学生寮の住人とのトラブル

美談のように思われるこのストリートアートプロジェクトですが、実際は作成中は順風満帆とはいかなかったようです。

プロジェクトの企画・趣旨は賛同されたもの、実際のストリートアートの壁画を作成する過程で、スプレーなど塗料の匂いに悩まされて生活することが苦痛になり、学生寮の住人の中にはこのプロジェクトが進んでいることを苦々しく思う学生もいたそうです。

しかし、そんな期間を乗り越え、ストリートアートが完成された取り壊し予定の寮を見た時、そんな思いは吹き飛びお気に入りの絵をみつけるほどにプロジェクトの成功を分かち合ったそうです。

ちなみに使われた染料はは約600リットル以上だったそうです。もはや想像ができません。

最後に・・・

この、学生寮をストリートアートで彩るというプロジェクトは、世界の一つの地域で起きた、一つのエネルギッシュなイベントです。

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